「もっとコスチュームジュエリーを知ろう‼︎ ②」by 中島あけみ先生♪

コスチュームジュエリーの女王ミリアム ハスケルの魅力
~贅沢な美しさは、手作業から生まれる~
「ミリアム・ハスケル(Miriam Haskell)」という名前を聞いたことがありますか?
コスチュームジュエリーという言葉を生み出したのはココ・シャネルですが、ハスケルはその世界で唯一無二の美しさを築き上げ、「コスチュームジュエリーの女王」とまで呼ばれました。 華やかで洗練されたハスケルのジュエリーは、ハリウッド女優やセレブたちを魅了し、今なお多くのコレクターに愛されています。
今回は、そんなミリアム・ハスケルの魅力をたっぷりご紹介します!
24歳でブティックを開業! ハスケルの挑戦

出典 : ベルカプリ アンティーク&コスチュームジュエリーショップ
ロケットペンダント
ミリアム・ハスケルは、1924年、わずか24歳の若さでニューヨークにコスチュームジュエリーのブティックをオープンしました。
当時のアメリカでは、ジュエリーといえば本物の宝石を使ったものが主流でしたが、ハスケルは「もっと自由に、もっとファッションとして楽しめるジュエリーがあってもいい」と考えたのです。
最初はココ・シャネルなどフランスのコスチュームジュエリーを輸入して販売していましたが、次第にオリジナルジュエリーの制作に挑戦するようになり、独自のデザインを追求し始めたのです。
と言っても、ハスケル自身はデザイナーではありません。彼女の才能は、優れた審美眼とプロデューサー力にありました。
彼女はインテリアデザイナーのフランク・ヘス(Frank Hess)と出会い、彼のコスチュームジュエリーのデザイナーとしての才能を見出しました。繊細で芸術的な感性を持つ彼は、ハスケルの世界観を見事に形にしていきます。
「ミリアム・ハスケル」ジュエリーは、単なるアクセサリーではなく、ファッションの一部として女性を輝かせるもの——。
そう確信していたハスケルは、時代をリードする存在となっていきました。
ハスケルジュエリーの魅力とは?

出典 : ベルカプリ アンティーク&コスチュームジュエリーショップ
鮮やかイエローグラスのセット
ハスケルのジュエリーが「コスチュームジュエリーの最高峰」と言われる理由は、その圧倒的な手仕事の美しさにあります。
1. 接着剤を使わず、すべて手作業で組み立てられている
一般的なアクセサリー作りでは接着剤を使ってパーツを固定することが多いですが、ハスケルジュエリーは違います。
細い糸やワイヤーを巧みに駆使し、ひとつひとつのパーツを手作業で組み立てていました。まるで繊細な刺繍を施すように、すべてが職人の手によって作られていたのです。
2. 鮮やかな色彩の組み合わせとこだわりの素材
ベネチアンガラス、ボヘミアンガラスを主として、単色ではなく、マーブル、グラデーションなど絶妙な色彩、異なる色、形のビーズを組み合わせ、まるで花が咲いたような華やかさを演出しています。1つ1つが計算された素材やパーツの組み合わせもハスケルジュエリーの特徴です。
3. 不均一な美を見出すバロックパール
ハスケルジュエリーに欠かせない素材がバロックパール(凸凹の形をしたパール)。ハスケルパールと呼ばれるバロックパールは、魚の鱗から抽出した成分とセルロース、アクリル樹脂を混ぜたものを十数回コーティングして1つずつ手作りされていると言われています。何層にもコーティングされたこのパールの凸凹が上品さと幻想的な風合いが現代でも人気を博しています。
4. 座金(メタルパーツ)もすべて手作業で加工
デザインに合わせて金属パーツをカットしたり曲げたりと、細やかな加工が施されているのも特徴。
同じビーズでも組み方を変えることで、さまざまな表情を生み出していました。
5. どの角度から見ても美しいデザイン
ネックレスやブローチの裏側まで丁寧に作り込まれ、立体的でバランス感覚に優れたデザインは、身体に自然にフィットします。
6. 1つのネックレスで、いろいろな着け方が楽しめる
2way、3wayで使えるように考えられてデザインされています。例えば、留め金にも美しい装飾が施されているので、留め金を前に持ってきてアクセントにしたり、首周りの調節用のアジャスターを前にしてY字ネックレスにすることも。また2連の短いネックレスを1連のロングネックレスにするなど、さまざまなアレンジが可能です。
7. セットで楽しめるデザイン
ネックレス、ブローチ、イヤリング、ブレスレット…
デザイン性の同じもので作られているので、セット使いでフォーマルに、単品使いでカジュアルになど、使いたいシーンに合わせて幅広く使い方ができます。
ハスケルの影響を受けたブランド・デザイナー

出典 : ベルカプリ アンティーク&コスチュームジュエリーショップ
ミルクガラスのネックレス&イヤリングセット
ハスケルの職人技やデザイン哲学は、多くのジュエリーデザイナーに影響を与えました。
例えば、以下のブランドやデザイナーが、ハスケルの影響を受けたと言われています。
Stanley Hagler(スタンリー・ハグラー)
スタンリー・ハグラーは、カラフルで個性的、ダイナミックなデザインのジュエリーデザイナーです。鮮やかな色使いや独特な形状で、見る人を魅了する作品を生み出しています。
- ハスケルとの関係
- 1940年代にミリアム・ハスケルの工房で働いた後、1953年に独立し、ニューヨーク市に自身のブランド「Stanley Hagler社」を設立しました。彼の作品は、鮮やかな色使いや独特な形状で魅了するジュエリーとして高く評価されています。
Lawrence Vrba(ローレンス・ヴァルバ)
ローレンス・ヴァルバは、アメリカのコスチュームジュエリーデザイナーで、特にゴージャスで豪華なデザインのジュエリーで知られています。
彼の作品は、ブロードウェイの舞台衣装やセレブリティのためのアクセサリーとしても使用されています。
- ハスケルとの関係
- 彼は1970年代にミリアム・ハスケル社のチーフデザイナーとして活躍し、ハスケルジュエリーの伝統的な技法を受け継ぎながら、新しいデザインを生み出しました。その後独立し、自身のブランド「Lawrence Vrba」を立ち上げます。
Erwin Pearl(アーウィン・パール)
アーウィン・パールは、1950年代から活躍したアメリカのジュエリーデザイナーで、コスチュームジュエリーだけでなく、ファインジュエリーの分野でも成功を収めました。
現在も「Erwin Pearl」というブランドは存在し、ファッションジュエリーを展開しています。
- ハスケルとの関係
- 彼は直接ハスケルのデザイナーだったわけではありませんが、ハスケルの影響を受けたデザイナーの一人とされています。特に、彼のジュエリーの緻密な細工や、装飾的なスタイルにその影響が見られます。
彼らのジュエリーには、ハスケルのような繊細なビーズワークや、手作業の温かみを感じるデザインが多く見られます。

出典 : ベルカプリ アンティーク&コスチュームジュエリーショップ
ライストーン&パール ネックレス・イヤリングセット
こんな素敵なコスチュームジュエリー、自分で作れたら?
ハスケルのジュエリーに使われていたビーズワークの技法は、私たちのハンドメイドにも応用できます。

ぜひ気軽に挑戦してみてください!
「コスチュームジュエリーはゴージャス、高価」と思われがちですが、自分で作ることで、好みの大きさ、形を作ることができますそして、その美しさをより身近に楽しめます。あなたも、ハスケルジュエリーのエッセンスを取り入れて、自分だけのアクセサリーを作ってみませんか?
【参考文献】
渡辺マリのミリアムハスケルコレクションVol.1、Vol.2
コスチュームジュエリーの世界田中元子アクセサリーコレクションVol.1、Vol.2
【画像協力】
ベルカプリ アンティーク&コスチュームジュエリーショップ