「ビーズと衣装 – 織りあう手仕事の美学③」by 荒木晴美♪

ビーズとの出会い ― 小さな素材がひらく世界 

atelier embellir 誕生

舞台衣装の制作に関わる中で、私は布だけではなく、装飾の素材にも強く惹かれるようになりました。ビーズスパンコールラインストーン。小さな素材が光を受けて輝く様子には、どこか特別な魅力があります。

舞台の光の中でそれらがきらめくと、衣装はさらに豊かな表情を見せてくれます。
そうした装飾素材に触れる機会が増えるにつれて、私は次第に「小さな素材そのもの」に興味を持つようになりました。

布の大きな面の美しさとはまた違う、繊細で密やかな世界です。

手の中に生まれるかたち

手の中に生まれるかたち


当時はまだ舞台衣装の制作を続けていましたが、仕事が忙しい時期には作業を家に持ち帰ることもありました。布地やパーツを広げて作業していると、気がつけば部屋の中は制作の材料でいっぱいになってしまいます。

ある日、夫から「このままでは家の中が布だらけになってしまうね」と言われたことがありました。
忙しさを理由に周りが見えなくなっていた頃です。今思えば、もっともな言葉でした。

そのとき、ふと頭に浮かんだことがありました。
ビーズだったら、こんなに場所を取らないかもしれない。

手元には、舞台衣装の装飾に使っていたビーズやスパンコールがたくさんありました。それらを生かして、アクセサリーを作ってみようと思ったのです。最初に作った作品はネックレスでした。

小さなビーズを糸で編みながら形を作っていく作業は、布の制作とは違う楽しさがありました。
手元の中で少しずつ形が生まれていく感覚は、とても新鮮だったことを覚えています。

小さな広がり

そうして作り始めた作品が、思いがけない形で広がっていきました。
私の作ったアクセサリーが、地方の雑貨店の方の目に留まり、作品を扱ってみたいというお話をいただいたのです。それも一店舗ではなく、都内や地方など複数のお店からお声をかけていただきました。

まだ本格的にブランドとして活動していたわけではありませんでしたが、販売するのであれば名前があった方が良いだろうと思いました。

名前が生まれるとき

パリ・オペラ座の舞台


1994年のことです。作品にふさわしい名前を考え始めました。
私は以前から、パリ・オペラ座の舞台や世界観に憧れを持っていました。
そのこともあり、フランス語で「美しく飾る」という意味を持つ言葉を探しました。

そうして生まれた名前がatelier embellir(アトリエ・アンベリール)です。

embellir は「美しくする」「飾る」という意味を持つ言葉です。
装飾の魅力を大切にしたいという思いを込めて、この名前をつけました。

変わらずに続くもの

振り返ってみると、舞台衣装の世界で学んだことは、今の制作にも深くつながっています。

素材の美しさを生かすこと。
光の中でどのように見えるかを考えること。
そして細部まで丁寧に作り上げること。

その感覚は、ビーズジュエリーを作る今も変わりません。
布の衣装制作から始まり、装飾の素材に惹かれ、そしてビーズへ。
小さな素材の世界に出会ったことが、私の制作の新しい扉を開いてくれました。

手のひらから始まるもの

手のひらから始まるもの


こうして、atelier embellirの活動は少しずつ始まっていきました。
手のひらの中で生まれた小さなかたちは、やがて人の手へと渡り、誰かの時間の中に寄り添っていきます。ビーズという小さな存在が、装飾を越えて、身につける人の物語に触れていく。

その広がりを感じながら、私は今も制作を続けています。

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