「ビーズと衣装 – 素材の声を聴く④」by 荒木晴美♪

色・形・質感の選び方

形・質感の選び方

自然の中にあるヒント

作品づくりのヒントは、いつも身近なところにあります。
季節の花だったり、海面に揺れる光だったり、夕暮れの空だったり。
特別な場所へ探しに行かなくても、日々の暮らしの中には心を動かされる景色がたくさんあります。
何気なく見過ごしてしまいそうな風景の中にも、美しい色や形の組み合わせが隠れています。

自然の中にあるヒント


私は気になった景色に出会うと、立ち止まってじっくり眺めます。
その場ではただ見ているようでいて、実は作品づくりのための大切な時間になっています。
最近では、ディズニーリゾートを訪れると植物を見て歩く時間をとても楽しみにしています。
ショーや建物だけでなく、花壇や樹木の植栽も丁寧に整えられていて、季節ごとにまったく違う景色を見せてくれます。

私にとっては、小さな植物園のような存在です。
季節ごとに植え替えられる花々を眺めていると、色の組み合わせや高さのバランス、葉の配置など、作品づくりのヒントになることがたくさんあります。

訪れたときには必ず写真を撮ります
花のアップ、植物全体の姿、そして景色の中でその植物がどのように見えているのか。
同じ植物でも見る距離や角度によって印象は大きく変わります。
花びらの形や色の重なり、葉の流れ、光の当たり方。
そうした違いを確かめるように観察しています。

色が教えてくれること


特に興味を惹かれるのは、花びらのグラデーションや寄せ植えの色の組み合わせです。
自然の中では、ひとつの色だけで花が成り立っていることはほとんどありません。
一見すると同じ色に見えても、中心に近い部分は濃く、先端に向かうにつれて淡くなっていたり、光の当たり方によってまったく違う表情を見せたりします。

よく見ると、わずかな色の違いが重なり合い、美しい調和を作っています。
そうした微妙な変化は、人の手で作ろうとしてもなかなか再現できない自然ならではの美しさだと感じています。
そうして観察している時間の中で、頭の中にはすでにビーズの色が並び始めています

この色ならこのビーズ。
この柔らかさなら少し透明感のある粒。
観察しているようでいて、制作の準備が始まっているのかもしれません。

ひまわりを形にする

ひまわりを形にする


そうした観察から最初に作品になった植物がひまわりでした。
夏のある日、花壇に一面のひまわりが咲いていました。太陽の光を受けてまっすぐに伸びるその姿に、思わず足を止めました。

青い空に向かって力強く咲く様子はとても堂々としていて、見ているだけで元気をもらえるような気持ちになりました。ただ美しいだけではなく、力強く前を向いて咲く姿に心を惹かれ、「この花をビーズで表現してみたい」と思ったのです。

私は作品を作るとき、想像だけで形を作るのではなく、実際の植物の姿をよく観察するところから始めます。ひまわりの花びらの並び方、中央の種の粒の密度、茎の伸び方。そうした特徴を見ながら、ビーズでどのように表現できるかを考えていきます。

素材と向き合う


素材選びも同じです。
ビーズは小さな粒ですが、素材によって光の受け方が大きく異なります。透明感のあるビーズと、内側から光るような中染めのビーズでは印象がまったく違います。また、デュラコートやパーマフィニッシュのように色の美しさが長く続く素材もあれば、やわらかな輝きを持つパール調の素材もあります。

私は自然や風景から受けた印象に近づけるために、色だけでなく光り方や質感も含めて素材を選んでいます。同じ黄色でも、透明感のあるものと柔らかな艶を持つものでは受ける印象が大きく異なります。そのため実際にビーズを並べながら何度も組み合わせを試し、作品のイメージに近いものを探していきます。

自然を題材に作品を作るとき、色についてはあまり迷うことがありません。
見たときの印象が、そのまま頭の中に残っているからです。むしろ時間をかけて考えるのは、形と質感です。見た方が「あ、この花ですね」と感じてくださるような、そのモチーフらしい表情を探していきます。

小さな物語を形にする


これまでに、バラや桜、レモン、オリーブなど、さまざまな植物を作品にしてきました。
中でも印象に残っているのが、オクナセルラタという植物です。別名「ミッキーマウスツリー」と呼ばれる少し珍しい花木で、赤い萼の中央に黒い実がつく愛らしい姿に惹かれ、ネックレスとして形にしました。

その作品をきっかけに、この植物を初めて知ったという方も多く、私自身が魅力を感じた植物を、作品を通して多くの方に知っていただけたことは、とても嬉しい経験でした。制作の途中で、最初に思い描いていた形にならないこともあります。けれど、そこで手を止めるのではなく、ビーズの並びや光の見え方を確かめながら進めていくと、思いがけず新しい表情が現れることがあります。

素材が教えてくれる小さな発見に耳を傾けながら、一針ずつ形を整えていく。
それもまた、ものづくりの楽しさのひとつです。

素材の声を聴く

最近は、花そのものだけではなく、その先にある時間の流れにも心を惹かれるようになりました。
例えば、ほおずきを題材にしたラリエットでは、実そのものの形を再現するだけではなく、色が移ろい、熟していく過程を表現したいと考えました。

また、作品の中に小さな物語を込めることもあります。
自然の中で出会った景色や、そのときに感じた空気、心に残った記憶。
そうした目には見えないものを、ビーズの一粒一粒に重ねながら形にしていく時間を楽しんでいます。
自然の形や色を観察し、それをビーズという小さな素材で表現する。

その時間は、私にとってとても大切な制作のひとときです。
見て終わるのではなく、自分なりに受け取った感動を形にして残していく。
作品づくりとは、その繰り返しなのかもしれません。
見て感じた印象を、できるだけ素直に形にすること。

そして素材の声に耳を傾けながら、一粒一粒を積み重ねていくこと
それが私の作品づくりの原点なのだと思います。